損害賠償請求権の利益はいつ算入するのか?

自社の従業員の不正経理などで会社が損害を被った場合、
会社はその従業員に対して損害賠償を請求する権利を得られることになります。
損害賠償が支払われれば、その支払われた額は益金として算入するのですが、
そのタイミングは支払を受けた時点ではなく、
その不正経理の事実が発生した時点になります。
つまり、昨年度従業員が不正経理をおこなっていて、
今年税務調査によってそれが発覚した場合、
損害賠償請求による利益は、請求を行う今年ではなく
去年に遡って算入することになるということです。

原則的にはこの損害賠償の請求先が自社の従業員ではなく
取引先の企業など外部の相手であっても
この損害賠償請求による利益はその発生時に算入すべきなのですが、
外部の相手である場合、会社はその不正行為等がいつ起こったのか、
どのようなものだったのかその時点で気づくことは到底できず、
その損害賠償の金額などについても後の訴訟などで初めて決定されるという性質から、
支払を受ける事業年度の利益として算入することが通達で認められています。

ところがこれが自社の従業員による不正経理などの場合、
作成した帳簿書類などを会社がちゃんとチェックしていれば
その事業年度内に不正内容も損害賠償として請求する額も認識できるはずだ、
と見なされてしまうのが大半です。
実際に支払いを受ける年度に益金算入できるケースはなかなかありません。

もし過去の年度に遡って収益を増加させることになった場合、
その額は収益金額と見なされます。
例えばその不正経理の内容として自社の従業員が
出張だといって旅費100万円を横領していた場合、
この旅費100万円は損害金になります。
一見、旅費が損害金という名称に変わっているだけで
利益への影響はないような気がするのですが、
その分の損害賠償請求権を不正の発生したタイミングで
計上することが求められるので、
結果的に過去の所得金額が増えてしまうことになります。
このように過去の課税額が変わって過去の税金の額が変わることも十分あり得ます。
そうなると延滞税もかかり相当面倒なことになりますね・・・
自社内の不正などはないに越したことはないのですが、
会社としても定期的にチェックを行っておく必要があるのかもしれませんね。

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