出張手当

出張手当という制度があります。
この制度は法人の税金対策の観点からかなりお得でして、
手当を払えば法人の経費になる上、
手当を受け取っても所得税等の対象にならないんですね。
通常、個人と法人とでお金のやり取りをする場合、
どっちかの税金が減ればもう片方の税金が増える、
ということになるのですが、
この手当は法人の税金が減ってそれでおしまい、
個人の税金は増えないんです。
これは利用しないと損ですよね。

ここで悩ましいのが出張の定義と手当の額です。
これらについては、会社としての規程通り支払えば
OKということになっているのですが・・・

ウソのような本当の話、実際、こんなことがありました。
「出張手当って規程があれば経費になるんですよね?」
「そうですね、規程通りに支払っていれば
経費として取り扱われます。」
「そうですか!では、規程を作ったので
確認してもらっていいですか?」
「はい、いいですよ・・・ってこれは・・・」

<役員出張規程>
1.出張とは、業務遂行のため、社内から外出する行為をいう。
2.日帰、宿泊を問わず、出張手当は以下の額を支給する。
 -最低1万円
 -往復30kmの範囲であれば2万円
 -それ以上あれば5万円
 -宿泊の場合は1泊あたり別途10万円
3.なお、旅費の実費は全額会社負担とする。

「てことは、例えばお客様の会社を訪問するのは・・」
「出張です!」
「家電量販店に買い物に行くのは・・」
「それも出張です!」
「目の前のコンビニでの買い物も・・」
「もちろん出張です!」
「・・・」

「どうですか!これなら、出張手当だけで
毎月50万円ぐらいになります。
税金が発生するので給料はもらわず、
手当だけで生活するつもりです!」
「・・・」

こんなの通るわけありませんよ。
そもそも出張手当とは、損害補填なんです。
遠隔地に泊りがけで行かなければならないのなら準備も必要ですし、
自炊できないなら食事代もかかりますよね。
これに対する補填が出張手当なんです。
考え方としては、まず、外出を大きく「業務内」と「業務外」に分けます。
例えば飲み会やゴルフなんかは一般には「業務外」でしょう。
そして、「業務内」の外出を「通常範囲内」と「通常範囲外」に分けます。
この「通常範囲外」の外出が手当の対象となるわけです。

出張の定義を決めるときには、事業の内容に応じて、
「業務」と「業務外」との線引き、そして「通常範囲」の線引きを
明確にしておく必要がありますね。
そのうえで、(損害補填という性格からみて)
合理的な手当金額を設定する必要があります。

出張手当は節税上とても有利な方法ですので、
当然、税務署も入念にチェックしようとしてくるところです。
形式を整備するのは当然ですが、
それが事業の実態や一般常識から大きく乖離していないかどうか、
という視点にも配慮することが必要だと思います。

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